◯突然子供が友人の車内で嘔吐

車に乗った時にはさまざまな理由で気持ち悪くなったり車内で嘔吐してしまうことがありますが、自分や家族の車ならともかく、友人や他人の車内で吐いてしまうと実に一大事です。
車内での嘔吐の原因として多いのは車酔いですが、そのほかにも体調不良や乗車による疲れ、酒酔い、車内の臭いによる吐き気などさまざまです。
成人であれば気持ち悪くなった段階で車から降ろしてもらったり対処できますが、子供さんの場合は車内で突然吐いてしまうこともあります。
子供さんは体調の急変がおこりやすかったり、気持ち悪くなっても自分から言い出せなかったりする場合があり、体調の変化に気づけないことも。
不意に吐き気を催すと抑えられず嘔吐してしまうのは仕方ないことですが、吐瀉物でシートやカーペットなどが汚れてしまうと後処理が大変です。
自分の車でももちろん大変な事態ですが、これが他人の車の中だと汚れた箇所の清掃費用の負担が発生します。
いくら仲の良い友人が「いいよいいよ」と言ってくれたとしても、申し訳無さからなんとか対処したいものです。
そんなときにある”保険”が使える可能性があることをご存知でしょうか?
この記事ではこういった不測の事態に対応できる保険や、保険の適用条件などをご紹介します。
◯嘔吐の被害は広範囲
車内で乗員が嘔吐してしまった場合、その被害はかなりの広範囲に及びます。
車に乗った時に気持ち悪くなった経験は多くの人がお持ちだと思いますが、がまんできない極限状態になると悪いと思っても嘔吐が止まらないことがあります。
一度吐き始めてしまうと座っているシートや足元のカーペットなどに吐瀉物が飛散して汚すと共に、吐瀉物の臭いが車内に充満します。
吐瀉物の汚れはシートなどに染み込んでしまうため時間が経っても汚れや臭いが残り、車内の環境が最悪の状態となります。
嘔吐の汚れはちょっとやそっとの拭き掃除ではきれいにならず、カーペットの下やシートの内側、インテリアの奥に残留することでいつまでも臭いが消えません。
徹底的に清掃するためには部品の取り外しや専用の薬剤を使うプロのクリーニングサービスに依頼するほかありませんが、当然ながら高額の費用がかかります。
子供が引き起こした問題は家族で対応したいところですが、やはり気になるのはどのぐらい費用がかかるかでしょう。
◯不意の損害に使える”個人賠償責任保険”とは?

他人の車に対して誤って被害を与えた場合であれば、”個人賠償責任保険”を利用して保険の範囲内で嘔吐の被害を保証できます。
通常車の損害や事故の被害に対する保険は車の所有者、もしくは事故を起こした相手が加入している任意保険などでまかなわれます。
同乗者に対してケガをさせたなどであれば車の所有者の保険から支払われますが、今回の場合は同乗者自身が損害を引き起こした側になりますのでこの対象にはなりません。
同乗者が引き起こした吐瀉物のクリーニング、といった事態には、車の所有者が加入している保険ではなく同乗者自身の保険を使用する必要があります。
そこで利用するのが”個人賠償責任保険”で、この保険は日常生活において「誤って」他人に怪我をさせてしまったり、損害を与えた際に適用できます。
個人賠償責任保険の適用範囲はかなり広く、自転車で人にケガをさせてしまった、購入前の商品を破損させてしまった、など不測の事態に対処できます。
「他人の車の車内で嘔吐して汚してしまった」という事態も個人賠償責任保険が適用される可能性が高く、適用された場合は保険の範囲内で車の清掃費用などをまかなうことができます。
なお個人賠償責任保険の適用には「不測の事態」が大前提なので、故意に嘔吐を引き起こす行動や状況が認められた場合は適用外となる可能性はあります。
状況については保険会社から聞き取り調査などが行われるので、適切に答えて判断してもらうと良いでしょう。
◯個人賠償責任保険の加入方法
多くの方が個人賠償責任保険と聞いてあまり聞き慣れない保険だと思いますが、それもそのはずでこの保険は単独で加入することがほぼありません。
火災保険や自動車保険に特約として付与されており、自分の加入している保険を確認すると個人賠償責任保険も加入済みのことが多いです。
個人賠償責任保険の加入方法は保険の種類や保険会社によって異なりますが、保険加入時に自動的に付与される場合や、特約として設定する場合があります。
また対象の火災保険などに加入していることを前提として、追加で個人賠償責任保険への加入ができる保険もあります。
そのため子供さんの突然の嘔吐で車が汚れてしまった時、まずは慌てずに自分の加入している保険の状態を確認しましょう。
もし個人賠償責任保険も適用されていれば、少なくとも費用面の負担は心配しなくて済むでしょう。
なお個人賠償責任保険単体の保険商品を扱っている保険会社はほぼなく、範囲の広い保険内容なのであくまで追加のサービスとして設定されています。
◯個人賠償責任保険の上限は?

吐瀉物がついた車の清掃に個人賠償責任保険を適用する場合、気になるのはかかる費用が保険の範囲でおさまるかどうかです。
車に吐瀉物がかかった場合の清掃は基本的にプロのクリーニング業者に依頼して行うもので、車自体を預けてから徹底的な清掃を行います。
その費用は汚れた範囲や清掃の方法で多少変動しますが、清掃だけであれば1箇所20,000円〜50,000円程度が相場となります。
また清掃時に車の部品の取り外しや交換が発生するとより費用がかかり、追加で数万円必要なこともあります。
これに対して個人賠償責任保険の上限金額は「1億円」となっている保険会社が多く、少なくとも車の清掃に対しての支払金額としては十分に対応できます。
保険の条件によっては「3億円」や「無制限」になっていることもありますが、それに伴って保険金額も上昇しますので一般的なカバー範囲としては1億円でも十分でしょう。
◯嘔吐に対して個人賠償責任保険が適用されない場合
友人の車に子供が嘔吐してしまった、というシーンに対しては多くの場合個人賠償責任保険が適用されますが、次のようなシーンでは適用外になる可能性もあります。
・嘔吐が予測されることを行っていた
車内での嘔吐は車酔いや体調不良などが原因のことが多く、急なこういった変化は不測の事態として個人賠償責任保険の範囲にはいります。
しかし例えば車に乗る前に明らかに顔色、体調が悪く、また嘔吐を併発するような病気になっている場合、事前に嘔吐が予測できたとして適用外になる場合があります。
・子供が個人賠償責任保険の範囲外
個人賠償責任保険の多くは適用範囲として家族が含まれていますが、その範囲は「生計をともにする同居家族」がほとんどですので、成人済みで生計が別の子供には適用されません。
ただし保険の条件によっては別居の未婚の家族が含まれていたり、親から仕送りを受けている別居の学生、なども適用範囲となるので、保険会社にしっかり確認すると良いでしょう。
・車内で嘔吐を引き起こす行動をしていた
子供さんはときおり予想外の行動をするものですが、もし車内で口に異物を突っ込むなど嘔吐を引き起こす行動をしていたら、故意の問題として保険の適用外になる場合があります。
どこまでの行動が適用範囲外になるかは保険会社の認定によりますが、もし子供さんが怪しげな行動をしており保護者がそれを静止しなかった場合などは不利な条件になるでしょう。
・泥酔状態で乗車した
もし車に乗る前にお酒を大量に飲んでおり、嘔吐も考えられるほど泥酔状態のまま乗車したのであれば、不測の事態に認定されない場合があります。
泥酔している状態で嘔吐しそうかどうかの判断がしづらい事情はあるものの、車のドライバーや同乗者が冷静に判断して乗車させないという選択肢もあったはずです。
それでも無理に乗車させて嘔吐を引き起こせば、故意の事態であると言われてもしかたないでしょう。
◯個人賠償責任保険の利用方法
子供が引き起こした嘔吐の清掃を個人賠償責任保険でまかないたい場合、保険会社に連絡をして各種認定手続きを受けることから始まります。
保険会社に電話をして事態を連絡すると、まず保険会社から事実認定の為にいくつか質問が来ます。
これに対して返答すると保険会社の方で状況を判断し、不測の事態であると判断された場合には個人賠償責任保険の適用が決まります。
その後は保険での事故対応と同じく保険会社から被害を受けた人(今回は車の所有者)に連絡が行われ、その後の対処を相談します。
保険会社によっては被害を起こした側(今回は子供の家族)が間に入って折衝することもできますが、連絡の不備や手間を考えると保険会社におまかせしたほうがよいでしょう。
保険会社におまかせすれば、車の清掃費用の見積もりやクリーニング業者の選定、クリーニング中の代車の手配など細かい対応をすべて行ってくれます。
また清掃費用の支払いも保険会社とクリーニング業者の間で手続きされますので、清掃完了まで基本的にすることはありません。
もちろん個別に車の所有者への謝罪は行うべきですが、車が完全にきれいになって戻ってくるのであれば印象は悪くないでしょう。
◯確実なプロのクリーニングサービスを利用しよう
もし友人の車の中で子供が吐いてしまった時には、仲の良い友人であれば無償で許してくれるかもしれません。
ですが個人賠償責任保険が使用できる状況であれば費用負担は考えなくてもよいのですから、ぜひプロのクリーニングサービスを相手にもおすすめしましょう。
吐瀉物がかかった表面の清掃だけでなく、奥まった箇所にある吐瀉物を除去するためにプロはシートやカーペットなどを取り外した上で隅々まで清掃してくれます。
また汚れのひどいシート表皮やカーペットなどは新しいものに交換する対応も出来るため、完璧にきれいな状態になるでしょう。
中途半端な清掃では残った吐瀉物でいつまでも臭いが消えなかったり不衛生な状態が続きますので、個人賠償責任保険の適用で徹底的にクリーニングしてもらいましょう。