◯不意に起こる灯油こぼれの原因は?

灯油は冬場の暖房にはかかせない燃料の一つですが、灯油を運搬する際に車内にこぼれてしまうと大変です。
灯油はファンヒーターやストーブなど幅広い暖房機器に使用されますが、定期的な燃料補充が必要なので冬場には何度も灯油の購入、運搬をします。
灯油は18Lや20Lのポリタンクで運搬するのが一般的ですが、その重さは20kg近くになるので車のトランクやラゲッジルーム、場合によってはシートの上において運搬されます。
ポリタンクには密閉できるキャップが使われていますが実際には灯油がこぼれることがあり、キャップの緩みや給油時に垂れた灯油、ポリタンクの経年劣化での漏れなどが原因になります。
またきちんと固定していないと車の走行時の揺れや坂を登る際にポリタンクが倒れてしまう場合があり、灯油が大量にこぼれることも。
こぼれた灯油は車内のカーペットやシート表皮などに付着、吸収されてしまい、灯油特有の石油臭が車内に充満することとなります。
そのため灯油が車内こぼれたときには早急に対処する必要があり、この記事では初期の対処やクリーニングの方法をご紹介していきます。
◯車内の灯油こぼれの初期対処方法

車内での灯油こぼれは量自体は少ないことがほとんどですが、数滴の灯油がこぼれるだけでも結構気になる臭いが発生します。
灯油は揮発性の燃料なのでこぼれた直後から揮発して車内に拡散しますが、ガソリンほどの引火性はないため火災に繋がることは稀です。
しかし臭いは別で、特徴的な石油臭は乗っている人に気分の悪さや吐き気を引き起こす原因になりますので、灯油のこぼれを発見したときにはとにかく換気が重要です。
たとえ目視できなくても「なんか灯油臭いな…」と思ったときには、窓を大きく開けて空気の循環を行いましょう。
またこぼれた灯油を即座に吸収するのが効果的で、ティッシュやタオルなど乾燥した紙や布をこぼれた箇所に押し付けることである程度除去できます。
カーペットやシートなどにこぼれると時間と共にどんどん吸収されてしまいますので、とにかく素早く拭き取ることが重要です。
拭き取る際にあまりゴシゴシこすると逆に広げてしまうので、押し付けて灯油をティッシュなどに染み込ませるようにするのが良いです。
初期の対処は早ければ早いほど効果が高いですが、しかしどれほど早くても灯油の臭いはなかなか消えません。
そんなときには徹底的なクリーニングが必要なので、灯油がこぼれた箇所は正確に覚えておくと良いでしょう。
◯車内の灯油こぼれのクリーニング方法
車内にこぼれた灯油のクリーニングにはいくつかの道具を利用しますが、いずれも新たに用意したり自宅で調達するため、初期対処と別に時間を設けて行います。
灯油汚れのクリーニングはこぼれた箇所によって対処が変わるので、方法をいくつかご紹介します。
【取り外し可能な部位(ラゲッジトレイ等)】

灯油をこぼした箇所がトランクやラゲッジルームの床面(ラゲッジトレイ)で、床のカーペット部分が取り外し可能な場合にはクリーニングが行いやすいです。
灯油はトランクやラゲッジルームに積み込むことが多いので、その床面のラゲッジトレイに灯油がしみ込んでいます。
しかし最近の車は荷室の床下にスペアタイヤやサブラゲッジを設けていることが多く、そこへのアクセスのためにトランクの床、ラゲッジの床が取り外せる構造になっておりクリーニングは結構簡単です。
少量の灯油の染み込みであればとにかく揮発させることが手軽な対処なので、ラゲッジトレイを取り外した上で天気の良い日に天日干しするだけです。
1日干すだけでも結構揮発させることができるので、よく灯油を乗せるトランクやラゲッジルームに対するクリーニングはこれだけで完了することも。
もし天日干しした上で数日経って車内に臭いが残るようであれば、再度天日干しをするか、後述するクリーニング方法を試してみましょう。
【取り外し不可能な部位】
もし灯油がこぼれた箇所が座席周りのカーペットやシートの上、車内のインテリアパネルなどの場合は、取り外しは容易でないため車内でクリーニングを行うこととなります。
その際に必要な道具として次のものを用意しましょう。
・ティッシュ or 乾いた雑巾
(灯油を吸い取れるものであればOK)
・無水エタノール
・中性洗剤
まずカーペットなどに染み込んでしまった灯油はいくら拭いても完全には除去出来ないため、効果的にクリーニングするために無水エタノールを利用します。
灯油と無水エタノールは混ざりやすい性質があるため、灯油がこぼれた箇所に無水エタノールを染み込ませることで、染み込んだ灯油を浮き上がらせて一緒に除去できます。
あまりエタノールでびしょびしょにする必要はなく、スプレーである程度染み込ませてからティッシュなどに吸い取らせると良いでしょう。
また灯油も無水エタノールも揮発性が高い物質なので、吸い取り除去のあとにしっかり乾燥させることで臭いも低減できます。
無水エタノールはドラッグストアやホームセンターなど比較的どこでも入手できますが、消毒用エタノールと間違えないようにしましょう。
消毒用エタノールには水分が含まれているので灯油の除去にはあまり適していませんので、必ず無水エタノールにして市販のスプレー容器などに移して使います。
なお注意点として灯油も無水エタノールも揮発したガスには引火性がありますので、車内を密閉せずに風通しの良い状態で作業を行いましょう。
乾燥中もしっかりした換気が必要ですが、1日程度おいておけば乾燥は完了します。
もし乾燥後にまだ臭いが残るようであれば、何度か同じクリーニングを行うと良いでしょう。
【本革シートにはエタノール使用不可】
無水エタノールによるクリーニングは手軽に入手出来る道具で行なえますが、本革シートに対しては絶対に行ってはいけません。
本革シートは高級感のあるシート表皮で車の上級グレードや高級車に採用されますが、本革はアルコールに弱く劣化を引き起こします。
本革シートの上にわざわざ灯油タンクを乗せる人も少ないですが、ラゲッジに積んだタンクから飛散する場合はあります。
本革シートに灯油が付着したときもまずは迅速にティッシュ等で吸着させるとよく、本革は染み込みが少ない素材なので早めであれば拭き掃除だけで清掃が完了するでしょう。
ですが灯油が付着してから時間が経っていたり大量に付着した場合には、どうしても臭いが残ります。
しかし無水エタノールは本革にも悪影響を与えるのでクリーニングには使用できず、本革シート用のクリーナーを使ってクリーニングしますが、そちらは灯油の積極的な除去はできません。
そのため本革シートの場合は、汚れをクリーナーで落とした後に次にご紹介する消臭対策を主体としましょう。
◯車内の灯油こぼれの消臭対策
灯油がこぼれたことによる最大の弊害はやはり臭いであり、臭いを直接消すための消臭対策も効果的です。
灯油の臭いには炭化水素の油臭さに加えて強い硫黄系の成分が混じっており、独特な頭の痛くなる臭いになっています。
徹底的なクリーニングによってある程度臭いは除去できますが、どうしてもカーペットやシートの奥に染み込んでしまった灯油までは除去できておらず、これらが臭いのもととなって残るのです。
一般的な家庭の消臭スプレーや消臭剤ではこういった匂いに対して効果が少ない為、近年よく見かけるようになった灯油汚れの消臭剤を利用すると良いでしょう。
灯油専用の消臭スプレーには消臭成分や臭いを隠す成分などが含まれており、家の中でも使える安全な製品も数多くあります。
灯油がこぼれた直後にスプレーしてもある程度の効果は見込めますが、一度クリーニング工程を行った上で消臭対策を行えばより高い効果が期待できます。
また消臭スプレー使用後に据え置き型の消臭剤も設置しておくとより効果的で、消臭ビーズなどが臭いを吸着して除去してくれるので残った灯油の匂いに対しても有効です。
◯灯油が大量にこぼれてしまったら
ここまでご紹介してきたのはある程度少量の灯油に対する対策ですが、もし大量に車内に灯油がこぼれた場合には家庭でのクリーニングは厳しいものがあります。
灯油がこぼれる状況はいろいろありますが、例えば走行中の揺れで灯油タンクが倒れてしまうと、密閉の悪いキャップ部分や劣化したタンクの隙間などから灯油が漏れ出します。
古い灯油タンクほどそういった危険が高くなり、床面一面にひろがるほどこぼれたときには通常のクリーニングや消臭対策では間に合いません。
大量の灯油がこぼれて揮発すると引火の危険性も高まりますので、即座に車を安全なところに停車させた上で窓やトランクを全開にし、空気の通りを良くしましょう。
当然火種になるようなものを近づけるのは厳禁で、冬場には静電気の発生にも注意が必要です。
大量の灯油のこぼれに対しても初期の対処は同一で、とにかくまずはできるだけ灯油をティッシュなどに吸い取らせて除去します。
量が多いときには1枚2枚では間に合いませんので、分厚くしたティッシュの塊やタオルなどを敷き詰めましょう。
灯油を吸い取った大量のティッシュなども引火の危険がありますので、ビニール袋にまとめて入れた後に水も相当量入れて置けば安心です。
そこまで行っても灯油の完全なクリーニングや臭いの除去は個人では不可能ですので、プロのクリーニングサービスに依頼することをおすすめします。
◯プロのクリーニングサービスは必要か?
車内の灯油のこぼれに対しては専門のクリーニングサービスが存在しており、プロの技術による徹底的な清掃と消臭対策が期待できます。
個人でのクリーニングで出来る範囲はせいぜいラゲッジボードを取り外す程度であり、カーペットやシートなど灯油の染み込んだものを取り外して清掃することは出来ません。
プロのサービスでは部品の取り外しを含めた清掃を行ってくれるので、カーペットやシートの奥に染み込んだ灯油の除去や、インテリアの奥に入り込んでしまった灯油の除去も可能です。
また灯油の臭いはこぼした箇所だけでなく揮発して社内全体に拡散しますので、それらが染み込んだ天井などの清掃も行ってもらえます。
プロに依頼するかどうかは灯油のこぼれた量で判断しますが、自分できれいにしても臭いが消えないときに一度トライしてみるとよいでしょう。